労働時間の概念
労働時間とは、
「使用者の指揮命令下にあって労働力を提供している時間で実労働時間(実際に労働を開始した時間から現実に労働を終了した時間まで)」
のことをいいます。
この実労働時間とはその時間中に具体的な作業をしていることは要件としないで、使用者の指揮下にあり、いつでも作業できるように待機している時間も含まれます。
では、労働時間はどの範囲のことをいうのでしょうか?
たとえば、クリニックの敷地や建物に入ったときなのか、制服の着用後からなのか、作業準備後なのか、実際に業務を開始したときなのかなどなど…
労働時間に含まれるかどうかは、
- 使用者の命令があるかどうか
- 業務に付随したものであるかどうか(その作業を行なうために必要なもの(通常必要とされるもの)であるかどうか)
- 法令で義務づけられたものであるかどうか
などを基準に判断することになります。
具体的には次のようになります。
まず、クリニックの敷地や建物に入った時点ではまだ使用者の指揮命令下にはありません。
従って労働時間とはなりません。
作業準備時間(たとえば医薬品や診療材料の整理整頓、医療機械の点検調整等)、作業終了後の整理整頓・後始末(翌日の準備を含む)は、特に使用者の明示の命令がなくても本来の業務に付随して発生するものですから、労働時間になります。
また、更衣時間については、従業員が任意に行う更衣時間は労働時間に含める必要はありませんが、あらかじめ義務づけられている制服の更衣時間については労働時間となります。
ここで問題なのがだらだらと従業員同士で無駄話をしながら更衣している場合とか、後始末をしている場合などで、そんな時間まで労働時間にカウントされたたらたまったものじゃありません。
こんな場合はタイムカードの設置場所を工夫しましょう。
更衣室に置いてあるとどうしても更衣の前後に打刻することになります。
受付事務の近くにおいて更衣が終わり作業出きる状態になったとき、作業が終了し更衣室へ向かう前に打刻させるなど場所の設置、打刻するタイミングの約束事などを工夫しましょう。
労働時間については、職種、勤務の特性、それぞれの職場慣行に応じて実質的にとらえる必要がありますので、労働時間の始まる時間と終わる時間について、上記の基準(1~3)にそって、就業規則などではっきりと決めておくことが後々のトラブル防止になり従業員も納得できるでしょう。