医療法人トラブル事例

医療法人トラブル事例

東京都が配布している、医療法人に関するトラブル事例です。
全ては実際に起こった事件ですので、非常に参考になります。

医療法人トラブル事例
東京都福祉保健局医療政策部医療安全課

1 医療法人が乗っ取られる例

概要

経営状態が悪化している法人に対して、経営の建て直しを目的に接近。
法人の役員、社員、事務長等の経営部門のポストに就任し、最終的には法人を乗っ取る。

具体例1

何らかの形で、社員や役員として法人に入り込み、「法人運営には、税理士等、法人手続きに詳しい専門家が必要」などと言って、仲間を社員に入れる。やがて、法人の中で多数派を形成し、理事長を追い出す。

医療法人の場合、出資の有無を問わず、社員総会の議決により社員に就任することが可能。出資の有無、出資額の多少にかかわらず、議決権は社員一人に一票であるため、多数派の意見により組織を動かすことができる。

具体例2

法人が銀行の融資を受けられない場合に、銀行の代わりに融資を行う。返済の目途がたたない場合には、融資を法人への出資に切り替え、出資者として社員に就任する。その後は上記具体例1と同様。
※ 出資者は原則として社員に就任する。出資した人間が退社する場合、出資割合に応じて法人資産を返還しなければならず、事業継続が困難になりかねない結果、法人は出資者にものが言えなくなる。

2 医療法人の財産が食い物にされる例

概要

法人の信用等を利用して個人的な利益を得た後、姿を消す。法人には多額の債務が残り、さらなる経営不振に陥る。

具体例1

「先生は医療に専念していただき、事務は任せてください。」などと言って、事務長等の役職に就任し、理事長印を預かり、法人名で借金や物品購入を行うなど法人財産を手にした後、姿を消す。

具体例2

一人医師医療法人で、理事長兼管理者の先生が亡くなり、管理者として(歯科)医師を雇うケース。

悪意をもった(歯科)医師の場合、販売業者からのバックマージンを目当てに、高額の備品や不必要な備品を購入する。マージンを手にした(歯科)医師は、「都合が悪くなった」などと理由をつけて管理者を退職し、法人には、借金と不必要な備品のみが残る。

3 内紛から社員総会、理事会が開催できない例

概要

設立時から実際の運営に理事長以外の者が実権をもっている法人の場合や役員、社員の人間関係にトラブルが発生した法人の場合、理事長が社員総会や理事会を有効に開催できず、法人の実質的運営が滞る。

具体例1

常務理事が法人運営の実権を掌握している法人のケース。

依頼されて理事長に就任した(歯科)医師が理事長職をやめたいと思った場合、後任の理事長を選任する必要がある。

しかし、理事長を決める理事会が常務理事等の画策により、理事が欠席して定足数不足のため理事会が開催できない。
そのため、後任の理事長が決められずに、理事長交代の役員変更届も監督官庁に提出できず、登記も変更できない状況が続く。(理事長を辞任することができず、その間におきた法人の不始末の責任を負わされる場合もある。)

理事長が辞任し、後任の理事長が選任されていない場合、死亡の場合を除いて役員変更届を受理できない。

具体例2

理事長(夫)、常務理事(妻)等、社員を親族で固めている法人のケース。

夫婦仲が悪化し、理事長と常務理事が離婚。
他の社員が常務理事側に付き、理事長の招集する社員総会を拒否した場合、社員総会が開催できないので、法人として新たな事項を決議できない状況になる。

4 病院特有の事例

保健医療計画により、ニ次保健医療圏ごとに基準病床数が設定されているが、島しょ圏域を除きほとんどの圏域が病床過剰となっている。

したがって現在ある病院病床は貴重なものとなり、その権利を取得できれば、都内で病院を開設したい者に売却したり、あるいは売却話で金を騙し取ったり、実際に自ら病院の運営に関わったりするなどして莫大な利益を得られる可能性がある。
ここに医療法人を乗っ取る妙味が生じる。

病院開設者が変わった場合に、病床は引き継がれないのが原則である。
個人間ではできないが、法人の場合には経営者の交代という形態をとれば実質的に病床を引き継ぐことが可能となる。
そのため、ブローカーが利ざやを稼ぐために、医療法人の売買に手をそめてくる。

5 法人の売却や法人の支配を目的に悪意をもった社員が暗躍する例

概要

ブローカーが社員権を二重に売買したり、社員権の売買契約書を偽造したりなどして、不当な利益の収奪を画策したり、経営者を名乗って法人に入り込む。

社員が変更した場合、認可権者に届け出る義務がない。
社員権とは、そもそも社員の有している権利のことであるが、持分のある法人の場合には、出資した社員は退社時に出資の割合で法人の資産を払い戻しを受ける権利がある。この権利を一般的に社員権という。(持分権ともいう)

具体例1

法人の社員間で争いがある場合に、争っているうちの1グループの意を受けて暴力団関係者が社員権を譲り受けた形態をとって病院にのりこんでくる。

理事長印を預っている者が理事長印を使用したり、あるいは第三者が勝手に理事長印を改印したりして、理事長が有している社員権(通常、理事長が社員権のほとんどを所有している)の譲渡契約書を勝手に作成する。

社員権に基づいて仲間を社員に入れて社員の多数を握り、役員を交代させるなどして法人の実権を奪ったりする。
法人に乗り込まない場合でも、偽造された社員権をさらに他に転売して、法人の社員が誰であるかを不明にする。
この場合、正しい社員総会が開催できないため法人の意思決定ができない状況になる。

社員の入社及び退社には社員総会の議決が必要であるが、社員総会の議事録も偽造される場合がある。

具体例2

理事長が誰かに争いがある場合、現理事長を解任し、新たな理事長を選任した内容の社員総会と理事会の議事録を偽造し、登記所に新理事長を申請する。

出来上がった登記簿をもとに社会保険診療報酬支払基金や国保連合会に届け出た場合、診療報酬の振込先が新理事長側にうつる。

対抗措置として解任された理事長が社員総会の議事録を作成し、新理事長を解任し自分を理事長に戻す。

互いに登記を繰り返すことで、支払基金等は診療報酬の支払先が不明となるので、診療報酬を供託する場合がある。
そうなると、資金が法人に入らず、運転資金が滞る事態になる。

登記所は必要書類がそろっていれば、登記申請を受け付ける。
供託とは支払先等が未確定の場合に、支払先等が確定するまで債権者に入金しないで資金を登記所にプールしておく制度である。

6 金利の高い利息を支払う羽目になる例

概要

運転資金が行き詰まり、銀行等の金融機関から借入できないときに、担保として診療報酬を債権譲渡し、高金利の金銭を借り入れる。

具体例1

病院の不動産は銀行の担保に入っており、担保となるものがないときに、診療報酬を担保に貸し付ける金融業者がいる。

診療報酬が借入先の金融業者に払われ、法人には入ってこないため、金融業者と交渉して運転資金を得なければならないので、相手の言いなりにならざるを得ない。
金融業者側は法人の足元をみて利息制限法を超えた利息を設定し、診療報酬を手にした金融業者は病院がつぶれると元も子もないので、金利の高い利子分を差し引いた金額を法人に戻す。
そのため、法人はぎりぎりの資金で運営せざるをえなくなる。

上記の具体例は、実際に都内で発生している事件です。けっして他人事ではありません。
トラブルがおこってからでは対応は非常に難しくなります。トラブル回避は法人の日頃の注意が不可欠です。

  • 社員、役員の選任は慎重に!
  • 理事長印の管理は厳重に!
  • うまい話に要注意!
次のような場合には速やかに信頼のおける弁護士等の専門機関とご相談ください。

  • 銀行以外から多額の借入をする時
  • 第三者が法人の経営に近づいてきた時
  • 理事会の運営がうまくいかなくなった時