有給休暇が取れない~時季変更権~

有給休暇が取れない~時季変更権~

従業員から有給の取得申請が出された場合に、院長先生としてすべての申請について許可を与えなければならないのでしょうか。

院長先生としては請求された時季がクリニックの正常な運営を妨げる場合は他の時季に有給休暇を与えることができます。
これを「有給休暇請求に対する時季変更権」といい、労働基準法で認められています。

それでは、「事業の正常な運営を妨げる場合」とはどういう場合でしょうか?

院長先生はこの時季変更権を理由にいつでも有給休暇を拒否できるものではありません。
本当に業務に支障をきたすことが客観的、具体的に明らかでないと無理です。

例えば、人間ドッグを行っている施設の検査技師が大きな検診の入っているときに全員有給取得の届出を出されその検診を受けられないとか、看護師全員が同時に有給休暇を請求してきた(GW前後によくある光景。)という場合は業務に支障をきたす場合に該当すると考えられます。

さらに有給休暇は退職が予定されていても、未だにその会社に在職中であれば、退職時まで有休を取得する権利がありますから自由に取得することができます。

1週間後に退職予定の方が7日の有給消化を請求してきた場合に、本当に業務が忙しく会社が時季変更権を行使できるかというと、答えは従業員の請求が通ります。
時季変更権は退職予定日を超えては行使できません。

また1ヶ月分の解雇予告手当てを支払って即時解雇した場合、残っている有給休暇はどうなるのでしょう?

結論は、有給休暇は在職中にのみ有効な権利なので解雇と同時に有給休暇の権利はなくなります。クリニックが買い取る義務もありません。