従業員への診療

従業員への診療

医院を経営上、従業員を診療する場合(自家診療)も多いと思います。

医院が、社会保険に入っていれば従業員への診療も、社保へ請求できます。
医師国保に加入している場合は、自家診療は請求できません。

どちらの場合も、窓口負担を取らないで診療する場合が多いと思いますが、この場合、診療実績があるのに、窓口負担分はゼロのため売上に計上されません。

特に問題なさそうにも思えますが、原則的には売上計上が必要です。

考え方は以下の通りです。

500点の診療の場合

1.社保に自家診療を請求する場合

  • 売上額    5,000円
  • 内、窓口負担 1,500円、請求分3,500円
  • 福利厚生費  1,500円

医院の利益は、5,000円-1,500円=3,500円

窓口負担分を計上せず、売上3,500円としても、結果は同じですが、税務会計上は、相殺せずに両建てで処理します。

2.国保の場合で、自家診療を請求できない場合

  • 売上額   1,500円
  • 福利厚生費 1,500円

医院の利益は、1,500円-1,500円=0円

この場合も両建て処理が必要です。

なぜ、このような処理が必要なのでしょうか?

これは、健康保険法・療養担当規則と税務の2つの問題があると思います。

健康保険法では、一部負担金は、患者は支払わなければならないと規定し、同時に医療機関は支払いを受けると定めています。
従って、一部負担金を受け取らないという行為自体が法令に抵触しますので、処理上は受け取った形を取ります。

<健康保険法 第74条(一部負担金)>

保険医療機関から療養の給付を受ける者は、その給付を受ける際、当該給付につき規定により算定した額に割合を乗じて得た額を、一部負担金として、当該医療機関に支払わなければならない。

<療養担当規則 第5条(一部負担金等の受領)>

保険医療機関は、被保険者又は被保険者であった者については健康保険法第74条の規定による一部負担金の支払を受けるものとする。

税務の場合、福利厚生費は医院の経費として全額算入されます。
この場合の福利厚生費は、従業員に支払う、見舞金等と同じような扱いとなります。

お見舞金には、もちろん受け取った従業員に税金の負担はありません。
しかし、常識的な診療以上に従業員が自家診療を受けていたらどうでしょうか?

その免除された窓口負担分は、給料の一部でないかと税務署は考えるのです。
給料であれば、源泉所得税を預からないといけません。

常識的な範囲内での自家診療で問題になることはないと思いますが、税務署に変な目で見られないためにも、自家診療の窓口負担分は売上に計上し、同額を福利厚生費としてきちんと処理しておく事が大事になります。

自家診療管理シート

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